fledgling-cae-engineer’s diary

駆け出しCAE技術者のノート

衝突試験とCAE。ダイハツ不正認証に対するものづくり太郎のツイートから学ぶCAEの現状

ダイハツの不正認証

 

 

ダイハツトヨタが2023年4月28日に、ダイハツ工業が生産するトヨタブランドの車両で認証申請時の不正行為があったと公表しました。

不正行為のあった車両は、ヤリスエイティブ(トヨタ)、アジア(ブロドゥア)、アギヤ(トヨタ、未発売)だそうです。

その不正行為というのは、これらの車両モデルで、国連法規「UN-R95」と中東の法規「GSO」に準拠した側面衝突試験を実施する際に、量産時の仕様にない変更を車両に施していたというものです。

具体的には、車両のドアトリム(ドア内側の樹脂製パネル)にスリット(切り込み)加工を施していたそうです。

ちなみにこの衝突試験は、車両に対し側方から衝突用の台車を50km/hで衝突させた際に、ダミー人形に生じる傷害値や脱出性を評価する試験だそうです。

 

この発表に対して、ものづくり系YouTuber ものづくり太郎さんが次のツイートをしました。

 

このツイートには、CAEに対するコメントが多数寄せられていたので、

それらを見て、衝突試験とCAEの現状を学びたいと思います。

 

 

引用リツイート

 

 

 

感想

 

引用リツイートを見ると、自動車業界の方が多そうですが、そうでない方もいらっしゃるようですね。いろんな意見が聞けるのは面白いです。

 

CAEと聞くとメカをイメージしますが、アパレル関係でもよく使われているみたいですね。一昨年オリンピックが開催されたとき、「ユニフォームの開発にシミュレーションが...」というニュースをテレビでちらっと見たような気がします。

 

新人教育の時にベテラン社員から「CAEは実験結果を再現できると思い込んでいる人がいるから、気を付けろ。」ってご忠告いただいたことがありました。そのときは、私もそう思い込んでいたので、意味がよくわからなかったのですが、いまはよくわかります。

 

シミュレーションの結果は、パラメータ次第なところがあるので、いかようにもできますよね。技術者倫理観が試される仕事だなぁと、つくづく感じます。

 

シミュレーションと実験結果が完全に一致するのは、理想的ですが、実際にはそう簡単にはいかないことが多いですよね。引用リツートにも書かれていますが、現実の物理現象を再現するためには、現物を何度も確認して、モデルの細部を作り込んだり、試験装置を見直したり、とにかく手間がかかります。

 

「CAE舐めてんのか。」←これには笑いました。でも、本当にみんなもCAEやってみなさいと思っています。

 

 

最後に要約

 

  1. CAD/CAE/CAMやMBDなどのデジタル開発は、自動車はもちろん、航空機、鉄道車両、スニーカーなどの広範な設計に適用されている。
  2. CAEを実際に経験したことのない人(コンサル、役員など)は、「CAEシミュレーションはあっているあっていない、とかいう議論のフェーズは当の昔に終わった。」と考えているが、そんなことはない。
  3. デジタルエンジニアリングの不正防止は、投資効率が悪い。それよりも、実機試験の結果が期待通りでなかった場合に、現場が揉み消すのを抑止する組織開発が必要。
  4. 実験とシミュレーションの結果が合うと大喜びする。そのぐらい、正しい試験をするのも、正しいシミュレーションをするのも難しいので、実機試験は必要。
  5. CAE舐めてんのか。

 

 

参考

ダイハツの認証不正、トヨタ社長「×を○に修正するより根が深い」:品質不正問題 - MONOist

不合格時の設計変更を恐れたか、ダイハツ衝突試験不正の「動機」 | 日経クロステック(xTECH)

ダイハツ、側面衝突試験の認証申請での不正行為に関する記者会見 「試験に1回で合格したかったのではないか」と奥平社長 - Car Watch